香象承伝14「變葉天竺葵 03」

◆昭和三十三年 日本葵同好会銘鑑 登場人気種
麒麟錦、麗山錦、秀峰錦、光山錦玉山錦錦秋山、錦栄山、栄冠、岩戸の舞、明山錦、三河錦、羽衣錦、錦鶴、浅間錦篠国錦山瑞雲錦、秀山 雲井鶴 宝山、春山、麗山(注:緑色その2に掲載済)

戦後、混乱期を乗りきった各地に著名な収集栽培家が現れます。中でも愛知県の加藤栄一氏、久米国太郎氏、埼玉県の金井貞知氏が知られています。金井氏は昭和の園芸界を牽引した園芸雑誌「ガーデンライフ」(1972年4月号)に「古典植物 葉変天竺葵」と題し、カラー写真で12品種、蓬莱山、錦紫殿、秀山、玉錦、春山、錦麟、君が代、岩戸の舞、吹雪の松を挙げています。

金井氏は翌年の昭和48年(1973)に完成した原色写真集「変葉天竺葵 金井コレクション」を日本多肉植物の会・初代信州支部長の横森道二氏に寄贈しました。これを筆者・中村が横森氏より拝領し現在まで蔵書しています。金井氏作出の極彩色美種「蓬莱山」を筆頭に約百種の原色写真集です。写真集とともに金井氏から貴重な品種群が横森氏に渡り、さらに当会初代会長・男庭安則氏にも五色葉葵(筆者らはこれら種類をこう呼称していました)収集が伝播。原産地が南アフリカであること、同属を擁し栽培も通ずる点があることから多肉植物界にも栽培が広がっていきました。

◆變葉天竺葵の栽培について
変葉葵の大葉系は挿し木で発根し生育も良好、節間が長く繁殖に事欠かないのでホームセンターや園芸店に出回ることもあります。対して小葉系は生育遅く、草丈も低く節間が極度に短いため一年経過しても切れるのは一本のみ。更にはあまり小さい親木は頂部を切っても小枝が出ないまま自滅してしまい、文字通り元も子も無くしてしまうこと多々ありました。ゆえに小葉系が一般に流通しているのは見たことがありません。ですが、変葉葵の小型種は多肉植物の球形メセンの栽培に習えば良いのです。われら多肉植物栽培家はその点承知していますので、要点さえ押さえれば安全に育てられると思います。

置き場
秋、気温が下がる9月中旬から春の気温が上がる4月中旬までは多肉温室で同居もよいが、梅雨期と秋霖期には降雨に逢わせず軒下などの風が通る台の上におくこと。球形メセンと同じ管理ですので、小型種は高温多湿に注意すべきです。冬期といえども蒸れや過湿は厳禁で、特に潅水の後などは開口部を全開放し通風を図り、室内湿度の早期下降を行うことが重要です。東海ベルト地帯以南の夏越しには小型扇風機が威力を発揮しますので、熱帯夜には昼夜を通して稼働させます。コツは植物に風を当てるのでなく、室内の排出口に向けて扇風機を置き、吸入口から入った外気が植物体を経過して排出するように設置することです。吸入口に対して対角に向けて行うのが重要で、室内を一方向に風が動くのが理想です。

◆用土
多肉植物の栽培用土でも良いのですが、「川砂4/桐生砂2/軽石細粒2/硬質赤玉1/畑土1」の混合土が良いです。要は排水が良くなおかつ最後まで乾き上がらず超微量の水湿を長く保持できる土が理想です。有機質や赤土主体の用土は水切れが悪く幾日も水湿を保ちますので、高温期の夏に根先が傷みそれが上部に伝播して根元から倒れます。抜いてみると根は腐り上部は生きているので慌てて挿し木にするも、高温多湿で最悪の時期なので消滅することになります。

◆潅水
これまた球形メセンと同様、秋から春までは「用土が乾いたら十分に」与えます。頻繁に小量を潅水するのは根元を痛めるので注意が必要です。休眠期の盛夏と寒中はやや控えること。高級小型変葉葵を失うのは主に「夏越しの潅水の失敗」にあります。ゼラニウムは多肉植物の一種なので、用土の乾燥では簡単には枯死しません。初夏から秋も用土が乾き切ってから十分に与えるのは基本通りですが、夏は乾いてから更に数日先送りして植物内の水の保留量が枯渇する直前が理想ですが「言うは易く行うは難し」です。温暖時期は生育するので乾き上がる前に潅水するのがコツで、この休眠期と生育期の違いの潅水テクニックを習得することです。

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります