香象承伝15「レウィシア 01」

本属が含まれるスベリヒユ科と言えばいわゆる雑草、農業や庭園に関わる人達から見れば乾燥土壌に強靭な雑草のスベリヒユを連想すると思います。ですが本種はスベリヒユの貧弱な花とは全く違う、花弁の長さと花の直径、雄蕊と雌蕊の対比のバランスなど見事な美しい花を咲かせます。多数咲いていても雑駁でなく整然としているところが上品でどこか日本的な和を感じます。レウィシアは Sinocrassula yunnanensis 四馬路や Sempervivum tectorum 巻絹等と同じ多肉植物の一員で、関東以西の栽培は準高山植物の扱いが必要です。(栽培については「02」にて触れたいと思います。)

Lewisiaの原生地は北米大陸に限定され、オレゴン州からカリフォルニア州にまたがる山地です。同科にはPortulacaのハナスベリヒユやTalinum櫨蘭(ハゼラン)なども属します。 以下「The Genus Lewsia R.C.Elliotto 1966」を参照して記述します。

1. cotyledon グループ
根生葉はロゼットをなし、緑色。普通辺平。地表面に広げる。花茎に着く葉は小型で苞状である。花を多数つけ寿命は長い。このグループは美花種を含む。

L.cantelovii  J.T.Howell
原産:シエラネヴァダ山脈の西向き斜面。幹はやや球形で根は多肉質。葉は倒披針形。長さ3cm。葉辺は鋭く密生した鋸歯で葉先端は鈍頭切れ目あり。葉幅は先端に近く幅広く、下部に向かっては一定の幅で狭い。花弁は小型で淡いピンクに濃いピンクの筋入り。長さ8mm。

L.congdonii (Rydb.)J.T.Howell
原産:カリフォルニア州シエラネヴァダ山脈西側斜面。常緑性。幹は短く根は多肉。葉は多く倒披針形、鈍頭。濃い緑色。他の種ほど多肉でない。長さ6~12cm。長く幅広く、葉先尖る。葉は全長中心部で最大幅。レウィシア中最大種。花序は広く分枝し多数の花を着ける。花弁はバラ色。長さ1cm。花期は4~7月。

L.cotyledon

L.cotyledon (wats.)Robinus.
原産:オレゴン州南西部。カリフォルニア州の北西部。常緑性。幹は重く太さ1.8から2.25cm。根は肥大する。葉は多数で4.5~12cmの長さ。ヘラ型で全辺。先端に短突起をつける。枝は多数。高さ36cmまで。2~4の互生または対生の鋸歯ある苞をつける。花序は多数の花を着ける円錐花序。花弁は8~16枚、白色でローズ色を帯びる、または鮮鮭肉色。次第にローズ色に変わる。雄蕊は花弁より短く長さ1.5cm。花期は4~7月。

L.cotyledon var. heckneri

L.cotyledon var. heckneri 
カリフォルニア州トリニチュイ郡。葉は多肉質で扁平、強く鋸歯。内曲しない。長さ7.5~15cm。花弁はピンクないし濃いバラ色で時に白にピンクの線条入り。長さ2.25cm。花期3~7月。

L.cotyledon var. howellii

L.cotyledon var. howellii
細長くしばしば内曲。基部から2/1~3/1波立つ。

L.tweedyi

 L.tweedyi
原生地はカスケード山脈東の岩斜面。葉の長さは12~24cmで、肉質。幅は最大6cm。花茎は直立し、高さは最大24cm。花の直径は最大6cmで、色は美しいサーモンからオレンジピンク。一茎に8花まで着ける。これは他種を抜いて最も派手なレウィシアです。


2. pygmaea グループ
細い葉は短い幹の先端に着生。根は人参状、上端で直径1.5cm。葉は芝状に密生。花茎は葉より短く一花茎に1~3花をつける。急速に成長、開花結実し葉は消失する。時にはこの間なんと2週間である。現地の夏は非常に乾き、冬は雪に覆われる。分類はガク片また花茎に着生する一対の苞の位置による。

L.brachycalyx Englem.ex Gray
原産:ユタ州からアリゾナ州の湿った草地。根茎は短く肥大し、分岐する。葉は長さ4cm。花は単生で径約4cm。花弁は3~9枚で通常白色、時に帯桃色。苞はガクの直下に着生し、形はガク片に似る。花弁はガク片の2~4倍。花期は5~6月。

L.kelloggii

L.kelloggii
葉は鈍頭の先端近く元も葉幅広い。細く尖ったガク片は腺状の歯牙を有し、ガク片の直下に同型の苞を有する。花弁はガク片の2倍の長さ。

L.nevadensis
苞は枝の中央部にある。ガク片は尖り互いに重なり壺状のガクを形成する。花茎の長さは葉と同等。花弁の長さはガク片と同長。

L.oppositeifolia

L.oppositeifolia
枝に着生する葉は根際に生ずるより小型。花茎は直立、高さ18cmまで。苞を欠く。ガク片は丸く波打ち、腺を欠く。花弁はガク片の2倍の長さ。

L.pigmaea
苞は枝の中央にあり花茎は葉より短く、時にほとんど無柄。ガク片は卵型、古くなると脈を生じる。花弁の長さはガク片の約2倍。

L.sierrae
きわめて短い枝の基部に苞を生じる。鈍頭丸みのあるガク片は脈があり、その脈には短歯牙があり縁辺で終るものもある。レウィシア中最も矮性。花弁の長さはガク片の1.5倍。

L.triphylla
葉は一枝に3枚、時に地下で着生。ガク片は全辺、広楕円形。花茎はごく短く高さ6cmまで。花弁はガク片の約1.5倍。


3. redivia グループ
落葉性。短い厚肉で線形の葉はロゼットを形成する。短い根の頂点は小岩石の層中に埋もれる。花は地表に坐生。植物体に比べれば大輪で甚だ美しい。ガク片は2~3枚、花弁に似る。

L.disepala
葉の長さは3cm以下、ガク片は2枚。一茎に一花。楕円形の苞は2~3枚。甚だ短い枝の節の下に着生。

L.rediviva var. rediviva
葉の長さ6cmまで。ガク片・雄蕊とも多数。複数以上着花の基部に5~8枚線形の苞。

1965年発刊 「The Genus Lewsia」の画像はモノクロでさらに接写したため不手際お許しください。レウィシアの詳細を記述した本書は貴重で、数種の著名種以外の各種の形状を知るため参考になれば幸甚です。

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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