香象承伝14「變葉天竺葵 01」
「変わり葉ゼラニウム」または「五色葉ゼラニウム」と言われ、古くからGeraiumuとされていたので今でもこの名称で流通しておりますが、現在は正式にはPelargoniumと改定されています。P.zonale種やP. inquinansなどを親とする交配種、あるいは枝変わり種。多様な斑入模様や、質感に特徴的な変化を持つものを指します。
ゼラニウムは江戸末期にオランダから渡来しました。遠い国の代名詞「唐天竺」から来たとされ、「葵(あおい)」に似た馬蹄形の葉をもつので「紋天竺葵」と呼ばれていました。それ以前は花を観賞する種類が主でしたが、明治の中ごろ変わり葉が輸入されるとその美しく異国的な雰囲気が人気を博し、一気に流行しました。
◆「實際園芸」に登場
昭和8年5月号に「斑入り葵の流行品種と栽培」として沼津農園/濱島松三郎氏が紹介しています。
{以下それを元に記述します}
「斑入り葵の人気が出たのは明治42年ころ、当時私は西ノ宮で営業していた「大正園」の園員であったが、珊瑚閣の根付きで2~3銭で売っていたが次第に値上げし、根のない切枝で3、4圓でも希望者ばかりでいかに人気があるかを知ったのです。」(注:ちなみその頃の一圓は現在の二万円くらいになるそうです。)そのころ富士の雪、越の誉、三光錦、王冠、などは一鉢拾圓でも飛ぶように売れた。また聞いた話では太陽錦、地球錦、は全盛で五百圓~七、八百圓で売買された。」
「さらに第二回の大人気は昭和二年より三か年続いたが、昭和二年の高値、御所錦が拾圓が翌三年には御所錦の2~3枚葉で二百圓。錦旗、丹頂、錦鶴、世界ノ図は五拾圓から七、八拾圓の高値でも売人なく買い手ばかりであった。」(注:昭和2年の物価指数は1,099。令和元年で698,8で636倍ですから、200円×636=127,200円です。)この第二期流行期に新命名した千代田錦が改名前は四、五圓だったのが昭和三年に切り枝で百五十圓、最高値で千三百圓という想像にも及ばないものがあった。」
「その後、昭和五・六・七年度には大葉品種から小型種に人気が変わり、黒雲錦、紫宸殿、国宝錦に移り、これらは皆矮性種である。一寸(3cm)内外の苗で百圓より百五十圓で売買され親木で四百圓とさえ言われた。」
◆そのころの主なる品種
御所錦:性質強健、五色葉。出芽当時は薄黄色で後卵色になる。本紅に黒褐色蛇の目大型種。今から20年前に横浜植木会社が輸入と言われている。
千代田錦:性質強健、五色葉。出芽当時は黄色覆輪だが後白色になる。紅と褐色の細い蛇の目の切れ込み幾分あり大型種。昭和二年頃『艶麗』とされ全国に五六本あったものを片桐氏が買い集め同年「千代田錦」と改名されたものである。
漣(さざなみ):鮮麗なる青葉に雪白の覆輪。その雪白へ純黄の玉が鮮明に入る。20年ほど前に横浜植木会社で輸入されたが一度内地で全部枯死して、再度、同社が昭和三年輸入。
黒雲錦:矮性強権種。黒雲龍の実生より出たもの。黒地に黄と紅縦縞であるが黄覆輪ともなり黒褐色の蛇の目。五色葉。昭和4年群馬県にて実生作出された。
鳳凰錦:小葉にて大型種強健。青地に白大覆輪。葉切れ込み深く、秋季紅を出す。葉に香気あり、作出年度不明。
八千錦代:大型種。青地に茶褐色と紅太い蛇の目、クリーム色大覆輪。四国で実生された昭和三年神戸にて命名された。
◆大正期の品種 以下主に大葉系。
錦旗、丹頂、大虹、真鶴、世界図、紅千鳥、黒雲龍、富士の雪、神代、麒麟、乙姫、谷間の雪、濱千鳥、地球錦、白鷹、越の誉、金冠、王冠、峯の雪、金月、金世界、美可登錦、鳳凰錦、三光錦、珊瑚閣。
(以上 實際園芸 昭和八年五月発行)
※掲載写真につきまして:古いフィルム写真をカメラで再撮影などしていますので不鮮明なものが多いですが、すでに残っていない種もあり画像自体が貴重なものですのでそのまま掲載しています。ご了承ください。
この記事を書いた人
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タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります
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