香象承伝15「レウィシア 02」

Lewisia cotyledon栽培&園芸種
鉢物生産に従事していた1978年頃、当時取引のあった山梨のM種苗が販売していることを知り、50株を購入しました。美しい花に魅せられ種子を採り実生しましたが、いざ開花すると希望の美花種は3割にも満たない上、開花まで2~3年を要したので実生生産は頓挫に終わりました。そこで失敗を覚悟で芯をえぐり上部を挿し木とし、下部から腋芽を伸ばし、それを挿し芽とすることで数年である程度の株数ができましたので、試しに3.5鉢で出荷したところ引き荷であっという間に完売。当時の鉢花園芸のレウィシアはまだ一般には知られておらず「競り前に引き荷ではけてしまうので、可能な限り増量願います」のFAXがくる有様でした。

頭を止めた親株の根元に数本子株が出たら繁殖用に採取、川砂と鹿沼土の混合用土に挿し木し、発根の上肥培すれば一株から数本採取できるので毎年出荷量とバランスが取れて好サイクルです。鉢物生産業は種子か苗を卸業者から仕入れて育成栽培し、完成品を市場に出荷するのが基本ですから、幼苗を仕入れての生産よりも自園で供給できるこの方式は経営上ベストです。

当時の主たる生産鉢物の主流はシクラメンで、栽培原土は赤土ですから作成時には石灰と肥料を混入します。植物栽培には石灰混入は基礎知識と受け止め、他の生産品の用土も石灰を混入して作成していました。ところがThe Genus LEWSIA の本文中に [本属の栽培用土には石灰混入禁止]との記述があり、以後レウィシアの用土作成時には「石灰混入厳禁」と大書して原土の山に表示しました。最盛時には園の一号温室(正確には忘れましたがテニスコート二面の大きさ)の半分超まで、10,5cmポット入りカゴトレがぎっしりと並びますから必要な用土も半端ない量です。また早春からの液肥は温室内で油粕の15kg入り一袋を200Lのドラム缶に入れ、水を4/3入れ攪拌し一か月放置します。熟成したのを確認し、上水を適宜薄めて潅水替わりに動噴で与えると着蕾も良く、葉の艶が濃くなり花との対比が素晴らしくなります。増殖用大株は花を咲かせず先の液肥で肥培し根際から出る腋芽を順次挿し木に回し来年用の苗にします。

うわさを聞いて気心知れた複数の同業者が繁殖ノウハウを聞いてくるので、懇切丁寧に教えるのですが数年で匙を投げてしまいました。ガーデンショップで美しく咲きそろったレウィシア鉢を見ると40年前を懐かしく思いだします。

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります