香象承伝16「Graptopetalum “Kingstar”」

(=Taciveria X Kingstar 1989年; Echeveria X Kingstar)
Echeveria cante×Tacitus hybrid ‘Super Star’ 1984年交配。父方はエケベリアの女王と称されるEcheveria cante。中央メキシコの乾燥地帯に自生し、銀白色の葉縁に桃色を帯び直径45cmにもなる見事なロゼットを誇る巨大美種です。この白銀の神々しい姿と高く直立する花茎に深紅の花を咲かせたら、どんなに見事で素晴らしい植物になるだろうとの思いで着手しました。

母方はベンケイソウ科屈指の鮮烈な花をつけるTacitus bellusを元に海外で作られた園芸種Tacitus hybrid ‘Super Star’です。原種は1972年アルフレッド・ラウ氏によってチワワ州とソノラ州の標高1460mで発見されました。新種発見時は類する属がなく新属Tacitus bellus(Moran & J. Meyrán)と命名され、見たことのない美花種として多肉植物マニア間でビッグニュースと騒がれました。しかし原種は性質弱く繁殖どころか維持困難につき、上記の交配種が広がったようで、本種については伊豆の清水秀男氏が次のように記述しています。『 原種より先に国内へは、交配種のスーパー・スター(Tacitus hybrid ‘Super Star’)が最初に導入されて普及してしまったため、タキトゥス・ベルスは赤い花というイメージが先行普及してしまって、ピンクの本物の普及が遅れてしまったのだ。』

参考画像:Graptoveria ’Cherry Princess’(Graptopetalum bellum x Echeveria laui)

Echeveria cante × Tacitus hybrid ‘Super Star’は1984年交配採種し、翌年1985年播種。複数の幼苗が得られましたが、この時点で白粉種は皆無。形態的にbellusと思しきものを第一候補として数株残し開花を待つことにしました。1988年5月、うちの一個体成株に帯褐色の緑色ではあるが原種よりも数倍大型厚肉なロゼットをもつものが現れました。花柄は硬く直立し分枝、上を向いた十数の蕾を着ける。花弁は5枚で‘Super Star’の花弁は多小膨らみがある桃色星型であるが、それよりも細身で正開する直径3cmの花は目を射る濃赤色。雄蕊は突出し、花粉多く花弁の濃赤色に対比して際立つ優良美種でした。

Echeveria cante(当時はE.subrigida)の青白帯粉の葉と深紅の花を目指しての交配は失敗しましたが、bellusよりももっと大輪・多花にはある程度成功したことになります。他の候補数株は順次開花するも花色薄く小輪、花茎直立せずでこれらはすべて破棄しました。1989年に厳選した前記一個体をTaciveria cv. “Kingstar” と命名発表。数年かけて特性を保持する株分けによる無性生殖で一定量増殖できたので一般市場に出荷しました。

2024年現在は Graptopetalumに編入されGraputopetalum bellusとなっていますが、当初の旧属名Tacitusは「秘密の、隠された、気づかれない」の意。小種名bellusは「愛らしい」の意をそれぞれ表しています。

Tacitus hybrid ‘Super star’ ならびに Graptoveria ’Cherry Princess’ 画像は、清水秀男氏よりご提供いただきました。

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


前の記事

4月の各支部例会

次の記事

5月の各支部例会