香象承伝13「美花女仙 03」

◆竜炎(りゅうえん)
Cephalophyllum spongiosum(L.BOLUS) L.BOLUS(Jordaaniella spongiosa)

多数ある美花女仙の中でも直径6㎝の特異な巨大輪は類のない極美の色彩です。開花した細く長い花弁が見事に旋回し架空生物の竜が吐き出す炎の色を連想させる姿、和名「竜炎」は正木先生の命名ですがさすが先生の観察力と想像力には感服します。開花後数日で色彩は最高潮に達し、黄金色に紅赤色を混合した色に変化します。まさに近寄り難い迫力ある大火炎です。隆々とうねって旋回するさまは恐ろしくもあり美しくもあります。

太い幹は直径1cm前後で節を形成し、節間は3~5cm。自立し対生の葉を生ずる。葉は三角形の断面で上面は平ら、側面はやや膨らみ長さ4~5cm。学名の spongiosum はスポンジ(英:sponge)に由来し、その名が示す通り水生生物の海綿動物に似て柔らかく弾力がある。葉の色は青白色ないし黄緑色。他の本属種の多くは低く匍匐して群生するが、本種は粗い株立ちで大きな群生になり、現地では高さ18~24cm、株の直径50~80cmにもなります。そこに直径6cmの巨大花が各枝一斉に開花すれば砂漠の中で突如現れる巨大な火炎に驚嘆の声を上げるに違いありません。

原産は南アフリカ、ナマクアランド。南アフリカのイメージと言えば、我ら多肉コレクターは Euphorbia virosa、あるいは喜望峰にサファリでしょうか。スプリングボックの町を中心としたこのナマクアランドと呼ばれるエリアは雨がほとんど降らない荒野ですが、年に一度、広大な一面の花畑が出現するところで有名です。そこに自生するCe. Spongiosum は他の Cephalophyllum に比して水の要求度は格段に少なく、鉢植え用土は川砂を主に軽石砂を2割混入し排水よく植えます。赤玉主の用土は停滞する水で根から腐敗しますのでお勧めできません。このように用土を吟味しても梅雨、秋霖の長雨に合わせず、雨除け下に収容すべきでしょう。年間を通して乾き気味の潅水管理でこの植物は元気に生育しますから、多潅水は厳禁です。本種の美花を見るには入梅前より秋霖の間は温室ないしハウス内、もしくは軒下での栽培を提唱します。

この他のナマクアランド産多肉植物の失敗もすべてこの梅雨期~秋霖期に起こります。土の乾燥には驚異的抵抗力を持っていますが、日本の高温多湿・降雨では根が耐え切れず窒息してしまうからです。死んだ根は維管束により上部に連結していますから、そこから上部の植物本体に腐敗が進んで最後は株全体が死に至ります。根に障害が起きた時点では上部の葉は健康そうに見えますが、茎を切ってみると中は変色しています。緑色になるまで切り捨てて挿しなおしますが、夏場は時期がよくないので秋まで風の通る日陰で保管します。

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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