香象承伝「Worsleya procera」03

◆2006年9月11日9時08分 全7輪開花

はじめて見た1994年2月の真冬に咲いた花と比べれば、同一種と思えない迫力ある花には、別名ブラジルの皇后の名に恥じない品格と威厳があります。花の直径8cm、ユリ状の花弁の縁は緩やかにウエーブしています。花弁の色は吸い込まれるような紫青色、やや濃い斑点を散らし、花弁の先端からから基部に向かって徐々にしかも微妙に変化し、花弁基部でほとんど白または柔らかいクリームホワイトになる夢のようなグラデーションは、新婦のウエディングベールのように見事です。この微妙な色彩の変化を得意とする日本画の上村松園が筆を執れば、いかなる名画にも引けを取らない作品になるでしょう。

花弁は6枚で外側3枚は外花被、内側3枚を内花被と言います。雄蕊は6本で長く突き出て上向きに湾曲し先端にある葯から花粉を出します。雌蕊は中心にあり雄蕊より長く薄黄色です。本種の投稿サイトには多数の画像がストックされていますがまず重要視するのは花色です。注意深く見れば紫色が勝るもの、空色の薄いもの等、様々です。また花弁の形状も千差万別で、花弁が細く反転しているもの等、個体差が非常に広く微妙に違います。
幸運にも「我がWorsleya 」は格段の美花種です。思うに世界のT & M社が開花時に係員を派遣し、無数に咲いている株の中から花型と色彩を重視して交配したのではと想像します。[何人も採種厳禁]と社名入りのタグを添付し、後日滑落の危険をものともせず採種した勇気ある人物に敬意を表します。

◆7輪開花のバルブ

野球のバットのような驚異的バルブは葉をつつんだ「筒」で「球根」と言うには抵抗があり、小笠原ハマユウの形状と似ています。地上に出ている部分は高さ50cm超、根元の直径は9cmで昨年の枯れた葉の基部に包まれ、透明感のある茶褐色です。新葉の基部はこの長いバルブの底部から抽出されています。包む表皮は非常に薄く、昨今あまり見かけない刃物などの防錆油紙に非常に似ています。先端から縦に裂くのは容易ですが横には強く、刃物でなくては切れないほど強靭です。休眠期にはこの被膜に包まれていますが、冬季幾重にも重なった隙間に水が入ると腐敗の危険があるので適宜取り去るべきでしょう。

◆全7輪開花全景

鳳凰が美しい羽根を広げ飛び立とうとする瞬間のような優美な姿は素晴らしく、地球上に無数の植物がありますが、他にこのような美しい曲線と葉の配列は見たことがありません。長く優美な葉は独特の放物線を描き、しかもすべての葉が異なる角度で曲線を作っています。新葉はバルブから抽出時、無作為で発生しているように見えますが、展開すると摩訶不思議。見事に隣接する間隔を保って反転するのです。この配列はどのように算出されるのか驚異の一語です。

2021年現在、現地の個体数は非常に少なく絶滅に瀕していて、海外では繁殖に努力しているナーセリーがありますが本種の特異な性質上、栽培が容易でなく珍品希品の「肩書」は下ろせません。では改めて全7輪開花をご覧ください。

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この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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