香象承伝「美花女仙」01

◆清涼(せいりょう)
Semnanthe lacera (Haw.) N.E.Br.
Semnanthe lacera var. densipetala L.Bol.

原産地は西ケープ州南西部の冬の降雨地域にあるパールベルク、シモンズベルク、および隣接するペルデベルク山脈の固有種で、高さ60~70cmほどで木質化した頑丈な幹は直径1cmにもなる灌木状メセンです。葉は青白色の特徴ある色彩と、左右から圧縮されたように肉厚・重厚な、青龍刀に似た形の湾曲した平葉で長さ5cmほど。この葉の縁に見るからに鋭利(見かけだけ)な鋸歯状の凹凸があり、小種名の lacera( 「不揃に分裂した」の意)はこれが元になっています 。

園芸名「清涼」は、深山の岩窟より湧き出て深い渓谷を流れ下る「清流」を彷彿する涼感が漂います。品格のある青白い葉の色や、葉縁に発生する半透明の板状の禾が、厳冬の高山に見られる樹氷の芸術「エビの尻尾」を連想させるような、透明で冷え冷えの清風を感じる名称です。この園芸名は「正木五郎命名録 1971」に記載があり、古くから知られた有名種で「多肉植物培養法(昭和9年/長岡行雄著)」にはすでに克明に解説されていますが、発刊時には「清涼」の和名はなく、後日(1971年以前)正木先生が命名しました。

花は主幹の先に、直径5cmの輝く濃い紫紅色の豪華な花を一花つけます。鮮やかな花弁は雄蕊が変化したものと言われており、中心の雌蕊が見分けのつかないほど多数で一輪でも見ごたえ十分です。鮮烈と豪華さは全メセン類の中で筆頭に値します。本邦での花期は不定期ですが(現地は11 月~1月)、驚くべきは昼夜通して全開します。

横森道二初代日本多肉植物の会甲信支部長宅で、初めてこの花を見たときの衝撃的出会いを今も思い出します。私はあまりの美しさに挿し木用にカットを所望するなどできませんでした。草丈が伸びるので温室内収容時には苦労しますが、この花は何度見ても素晴らしい。当時信州のサボテン多肉愛好家は寒冷地のため半地下式温室でした。本ブログシリーズ初回に松本錦園での正木五郎先生と田中喜佐太氏が写った写真が掲載されていますが、田中氏の後方に信州独特の三角屋根温室が見えます。横森氏宅もこれと同形式の温室なので、クジャクサボテン・ジャカランダ・寒嫌竹・ツリーベコニアなど、枝を組み合わせて室内入口ドアの北側のスペースにギュウ詰めでした。

挿し木は発根しにくいほうですが、春の気温が上がってから発根剤を使うことで成功します。形状を乱す枝などを春に長さ10cmほど切って挿し穂とします。活着したら露天にてよく日に当て、一般鉢植え植物同様の雨晒しで育てます。着蕾のためには早春~晩春によく日光に当て、用土を乾かして花をつけます。終始潅水していると成長ばかりして開花しません。ましてや形状が藪状で花期以外は鑑賞上不向きのため、棚下などに入れてしまうと着蕾を阻害するので避けて下さい。

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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