香象承伝11「空中植物 01」

Tillandsia xerographica

Tillandsia(チランジア・ティランジア)は近年人気の植物で、土に植えないので手を汚さずペットのような感覚で楽しめることから特に若い女性に人気です。手間もさほどかからず、庭木や塀や壁に下げて場所いらず。何と言っても姿形がユニ­ークでチャーミングです。姿から想像もつかない美しい花も咲きます。中でもTillandsia xerographica(キセログラフィカ)はエアープランツの帝王として知られ、数ある本属の中で最も大型になり誰もが栽培を熱望する有名種です。この「空中植物」は亜熱帯林の最も高い樹木の枝や幹に着生し、十分の太陽光線と四六時中流れる空気に晒されて育ちます。森林天蓋の木の枝や幹に、一見いかにも不安定に見えながら以外にしっかりと着生しています。彼らは着生ラン同様に、多肉質の根から接着剤の様な特別な粘液を分泌し、着生相手の表皮に密着するので引きはがそうとしても簡単には採れません。こうして土を全く必要とすることなく成長するわけです。

‎本種は、エアープランツの中でも独特の美学を持っています。彼らの美しい銀白色の葉は強光により桃色を帯びることで、地球上の植物と思えないような、未知の星の岸壁に自生する何かのごとき風貌と素晴らしい色彩に変化します。葉は成長するにつれて自分自身を抱き込むようにウェーブし、らせん状に回ります。古株になると多くの芽を持ち、適度に日光と風に逢わせると見事な球形の団塊植物になります。その素晴らしい姿と色彩は本属中筆頭に値する美種です。大きな群生株は直径70cmの球状になると言われています。私の経験ではロゼットの直径は50㎝になり、中央の生長点が高さ45cmまで伸びあがり多数分岐して黄緑色の独特の花を咲かせました。他種と比べるとあまり期待されない花ですが、姿と銀葉の素晴らしさで補うには十分です。

‎先に触れましたが、エアープランツは現代のガーデニングの最大のトレンドの1つであり、その理由は他属と比べるとメンテナンスの必要がほとんど皆無だと言うことでしょう。次回でそのあたりを詳しくお話したいと思います。(02に続きます)

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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