香象承伝09「みすゞ刈る 01」

Antimima herrei (Schwantes) H.E.K.Hartmann 美篶(みすず)
古く戦前、昭和九年長岡行夫著〈文書堂〉「多肉植物の培養」134頁にRuschia herrei Schwant.と本文記載ありますが「美篶」の名称は記録なし。よって和名はその後命名と推理します。当時よりより知られたこの植物はLampranthus、Cheiridopsis、Ruschia等に流浪の遍歴があり学名表記の際には困惑しましたが、近年安住のAntimimaにたどりつきました。

高さ10cmマット状に群生し時に立ち上がる矮小な灌木状メセン。葉は長さ2cm幅7mm位の円筒状、上面はややフラットで先端は急に狭まり少し尖る。表面平滑、やや帯粉気味の青緑色で密に群生する。葉縁に細い透明ラインが入り、全面に青色半透明のスポットを散らす。花は直径1~1.5cm。淡桃色で花弁は通常揃って展開するが本種〈属〉は全花弁を4~6に分割して展開するのが特徴です。長く成熟した枝に各葉柄基部より発生し短花柄の先に一花を着けるが、すべての花が見事水平に咲き揃うのは上品で見事です。

先人がこの花の咲く様にふさわしい雅(みやび)溢れる名称は…と考えた末、あの万葉集より引用したのが和名「美篶」です。三鈴・美寿ゞ・美鈴・美須々…等みな「みすず」ですが、本題のアンチミマ・ヘルレイの和名は「美篶」の文字でなければ命名者の意に沿えません。ところで「美篶」とは?

◆美篶とは?01
「美篶」は長野県すなわち信濃の国を現す名称です。会社名・団体名・学校名などとして、県内に数えきれないほど多く存在している名称、それが「美篶」です。南は静岡、愛知の県境から北は新潟、富山県堺まで広大な広さで知られた長野県全域を、この「美篶」の二文字であらわすことは県民は皆知っています。

では「美篶とは何ぞや?」と県民に問えば、果たしてどのくらいの人が返答できるでしょうか。(02に続きます)

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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