香象承伝「児玉丸葉笹の雪」

◆「Agave victoriae reginae f.Kodama maruba 児玉丸葉笹の雪」

アガベ属は多数の種類がありますが、その中でも笹の雪は私の最も好む植物です。姿が端正で品があり、大きくなっても姿が乱れずビクトリア女王の王冠そのものです。アガベは直径数mになる大型種と拾数cmの小型種に大別され、大型種は広い温室が必要です。一方中型・小型のアガベは場所も取らないので、趣味家向きです。

中でも笹の雪は様々のタイプがあり、大きくても直径50cmなら巨大ですが趣味家は此のくらいが限界です。それでも植え替え時の重量は半端でなく、植えられた鉢をやっと持ち上げるほどになります。

この笹の雪は今から35年前、錦玉園が更埴市にいた頃の標本球や採種用鉢植え専用コーナーの中にいました。直径9cmの駄温鉢で明らかに葉幅が広く異彩を放っている「それ」は「どうか小諸に連れて行って」と無言で私に囁いていました。エレベーターで植物を上げて栽培していたそのコーナーは門外不出のエリアであることは周知です。それを承知で案内している園主・児玉永吉氏に、何としてもあれが欲しいと懇願しました。始めはダメの連発でしたが最後は「そんなに言うのならほかでもない君のことだから出しましょう」と獲得した代物です。

以来何度植え替えたか忘れましたが、数年前に植えたままなので実行することにしました。完全に根が回った駄温鉢から抜くことは至難の業で、あれこれ悪戦苦闘しているうちとうとう鉢が割れ、いっそ始めから割ってしまえば苦労せず抜けたのにと愚かな我を笑いました。抜いてみるとこの通り根が限界近く回り、植え替え時期であることは歴然です。これ以上放置すれば根が窒息して致命的結果になります。(画像4)

竹ベラで根気よく広げて本体から出ている健康な根を数本残してすべて切り落とします。この時短気にも本体直下から全て切ると発根に手間取り、生育に時間差が出来て変形しますから、生きた根を若干残すことが必要です。(画像5)

根の整理が出来たら安全のため、一週間明るい風の通る温室内で、空いた鉢に下部を入れて切り口の乾燥に努めます。本種は用土の乾燥には強いが極度の完全乾燥は良くないので、ごく微量の水分を残すことが肝要です。浅間軽石の中粒に未選別桐生砂を9mm目篩にかけ上に残ったものを2割加えてガラとします。(画像6)

鉢底に此のガラを2層ほど敷き、その上に本用土を数cm置いて笹の雪を置きます。多肉植物を大鉢に植えるときの必須条件は根をできる限り広げて植えることです。それには先の用土の上に笹の雪を置いて周りに用土を流し込みやや深めに植えます。が、早合点しないでくださいポイントはこの先の作業です。本体を少し持ち上げ下部に空間を作り竹ヘラで用土をゆすり込みます。一周鉢の縁と水代を注意しつつ高さと中心を決めて仕上げます。(画像7)

終わったら更に数日半日陰で放置してから鉢が入る大きな容器に深さ4cmに水を張ります。ここに鉢ごと入れて腰水とし、半時間置いて底部ガラ部分に水が給水されたら引き上げ温室内の明るい日影に置いて発根を待ちます。植えた直後に頭から潅水すると過剰水分になり未発根の植物には悪影響になりますから、根は水を求めて発根するので「馬の鼻先に下げた人参」の例えで誘うのです。したがってこの期間は雨を避け、用土が乾いたら同じように処置します。植え替え時期は梅雨明けの高温期がベストで、秋には発根しているので通常の潅水にします。

画像8の左がその笹の雪です。葉は活力に満ち、完全に発根して生育している現在です。

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この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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