香象承伝「Worsleya procera」02

◆再挑戦から12年経過 2006年9月10日6時57分 一輪開花

優雅に開いた花弁は薄紫を帯びた空色で引き込まれそうになる幻想的色彩、12年前の真冬に寒さに震えながら咲いた花とは格段の高貴な花色と形は想像以上の美しさです。この衝撃的瞬間を何と表現すべきか言葉もありません。この日を待ち望んでの通算42年。世界的美花と今、見つめ合っているのです。園芸植物にかかわり喜怒哀楽70年の結果です。

国内ではブルーアマリリスの名称で流通していますが、古くはアマリリス属でした。後に属名と種名は種子入手時の学名ワースレア ライネリーWorsleya raineri(Hook.f.Trab & Moldenke)となり、さらに現2021年ではWorsleya procera (syn.Worsleya rayneri)の学名で扱われ、ヒガンバナ科に属します。英国の植物師でエンジニアのアーシングトン・ワースリー(1861-1943)にちなんで名付けられました。‎海外でも開花は容易でなく、国内で開花すれば新聞社やTV局が取材に来るほどの園芸界の有名種です。

原産地は南米ブラジル・リオデジャネイロ郊外のオルガン山脈Serra dos Orgaos;(世界に他の自生地があるとは私は知りません)セラ・ドス・オルガオス‎‎(「オルガン山脈」)は、‎‎ブラジル‎‎の‎‎リオデジャネイロ‎の山脈で、‎‎‎リオより車なら1時間。‎‎標高の‎‎平均は海抜1,100m。標高1,500m以上のピークが6つあり‎‎‎、筆頭は驚異的姿で有名な「奇石」‎‎デド・デ・デウス(神の指)1,692mです。急峻かつ巨大な岩壁を持つ峰々は、晴れた日には50キロ離れた‎‎リオからでも遠望することができます。‎‎最高峰はペドラ・ド・シノ(ベルロック)で2,263mです。
気候は熱帯スーパー湿原で、一年の大半は大西洋から送られて来る湿った空気により湿度80%から90%、平均気温は13~23°Cですが、38°Cに達することもあります。平均降水量は1,700~3,600ミリで、夏期(12月~3月)は雨が多く、6月から8月の冬は乾季です。降雨量が多いため、このバイオーム特有の豊かな植生が育まれており、360種の蘭と100種以上のブロメリアを含む2,800種以上の植物が記録されています。

◆2006年9月11日6時47分 4輪開花

開花の状況を残すため多数の写真を撮りましたが、不思議なことに決まって朝日が昇ると開き始めます。合着した花弁が合わせた両手の指がほぐれて開くようにゆっくり展開しつつ、1時間ほどで全開しますがその過程の中でこの画像が最もバランスの取れているショットです。

自生山地では玄武岩が連なる険しい岩璧や斜面、あるいは巨大な一枚岩の割れ目や岩棚の、僅かのスペースにある岩屑に根を広げていて、比較的広い場所には複数の株がひしめき合い群生・分株して小群落を形成しています。山は急傾斜で歩行には非常に危険を伴う広大な斜面が続き、根元は低い草本や低灌木がまばらに生えています。T&M社のカタログに「採種に多大な危険を伴って手に入れたもので、云々。」とあるゆえんです。斜面や岸壁には水流があり、所によっては滝の飛沫が舞い、先に述べたように気湿は潤沢と思われます。日光は終日当たるが山岳特有の気象で午後は雲や霧が出るでしょうし、日光、風雨に曝され、大西洋から送られてくる湿気を含んだ空気が常に流れている環境です。

彼らは地形を選び十分に太陽光を受けられるポジションに生育するため、強光線に対処する特徴的な葉を備えています。一般植物の多くは太陽光に対して直角になるよう葉を広げますが、本種は太陽光線の照射角に合わせた絶妙な形態です。光の弱い朝夕に葉の側面(実際はここが表面)に光を受け光合成を行う。日が昇り、頭上に来ると葉への照射角は垂直になり、剣の峰に相当する表面は最小幅になる。当然葉の受ける光量は最小になり、午後より日が傾くと次第に光量が増える合理的な仕組みです。

マダガスカルの固有種で多肉植物のキク科Senecio crassissimus紫章)の葉にもこの原理が見られます。産地はアフリカ大陸の南東、インド洋西部の島で有名貴種、珍種が多く産する[宝島]です。互いの位置は大西洋を挟んで約1万2千キロ、なんと不思議な偶然でしょうか。

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この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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