香象承伝19「Euphorbia」03

◆蛸もの1
古くから孔雀丸形態のものを「タコもの」と称していますが、個人的に分けるとこの名称の種類は2グループとなります。
1.蕪(カブ)状の根茎から放射状に最大数十本の分枝を展開し、あたかも「蛸」の形態をもつもの。それゆえ厳密にはこのグループが「蛸ものエウホルビア」である。小型種から大型種まであり枝は地上を這いまわる。
2.太い蕪状または棍棒状、稀に球状の主幹から短く太い枝が密生するもの。子の頭が多数連なるので「多子」すなわちタコとされるグループ。
今回は1の「蛸」グループを挙げます。

Euphorbia caput-medusae  L. 天荒竜(てんこうりゅう)

長独楽型の根茎に上面平面があり、中央生長点に枝は無く外側に順に枝を発生し年ごとに枝が伸びる。枝の発生時は生長点が判る程度の矮性小型だが年々生長し、太さと長さが増し本数も増える。成株で50本前後、長は50cm以上になり、うねり、かつのたうつ。まさに学名の通りメデューサの頭そのもの。命名者リンネ先生に喝采を贈りたい。表面には菱型の突き出た鱗状を連ね古い表面は灰褐色になる。花に顕著なガク弁はなく、一見底部は白色である。原産地の風景では人家付近にも自生し、利用価値がないのか無造作に生育している。
これら蛸グループは繁殖の際、枝の挿し木は無限に伸びるので当惑するが、先端近くを切断すると分枝を始める。分岐点下部で切り取り挿し木すると本来の姿になる。

Euphorbia ernestii  N.E.Br.

直径6cmに達する逆円錐形の太い棍棒状。いぼで覆われている生長点の周りに放射状に広がる多くの枝が密集する。長さ最大6cm太さ最大8mmに成長する。上面は4mmの丸いぼで密に覆われる。発生する卵形の葉は2mmの大きさ。花は本体中心の周りと芽の先端に発生しサイズは6mm。細長い蜜腺は明るい黄色で、端に2〜8本の短い鋸歯がある。Eu. flanaganiiに似るがflanaganiiは主幹の頂部に平面があり、その部分に枝は無い。本種は頂部から枝が直立し、小型で伸びず乱れず放射状に密生する。枝が太く締まるので観賞価値が高い優品。

Euphorbia escrenta H.V.R.M 閻魔麒麟 (えんまきりん)

原産は南アフリカ東ケープ州。ここは内陸部の冷涼地域で冬期は時々凍結する。コーデックスは最大直径12cmにもなり堂々とした姿から地獄の閻魔大王を彷彿させる。枝は高さ25cmから最大40cmになる大型の蛸。花は純白のフワフワした羊毛のような形状で雄蕊は黄色。

Euphorbia fusca H.V.R.M 蛮蛇頭(ばんじゃとう)

原産は南アフリカ西部およびナミビア南部。植物径20cm高さ30cm。球状毬栗様で無数に並ぶ枝は規律正しく整然とし見事である。原産地は岩石と小石が連なる荒涼とした乾燥地帯で極度の少雨地方。春から秋までの高温期間は過湿に敏感で、用土中の一定以上の水分に耐えられないで根から腐敗する。乾燥には強靭であるからこの期間は施設内で降雨に逢わせない。

Euphorbia fortuita H.D.& S.
原産は南アフリカ西ケープ州で5か所未満の局所的種。厳しい環境の石英露頭に生育。非常にコンパクトな貴重種で、多肉植物取引のために収穫業者の標的になる。種名の由来はラテン語の形容詞「fortuita」に由来し、「偶然の」「偶然の発見」を意味する。

Euphorbia flanaganii  N.E.Br  孔雀丸(くじゃくまる)

南アフリカの比較的降雨のある北・東ケープ州を中心に、広い地域の砂地の草原に自生。植物の本体は明らかに亜円筒形または円筒形-楕円形で、高さ約20cm、主幹茎の太さ約10cm。地上最大50cmに直立、側面に太さ10mmの円筒形の枝が多数あり、濃緑色。葉の幅は5mmで線形。枝の長さ25mm直径6~10mmの指状。花は主幹の頂点から枝群生する間の空間部分に群開する。ガク片は黄色から黄緑色で、ガク片外側の縁に細かく3~15歯がある。開花時期は10月から4月の間。渡来年号は不明だが昭和初期頃からの有名種。自生地の環境に近似のため国内では栽培容易で普及しているが、管理要点が合致しない放任栽培で本来の姿でないのが惜しまれる。画像のものは我が若き10代頃、臼田清花園より購入。以来30年は優に超えて栽培し、古色蒼然、重厚と風格を感じる。
小諸の場合、5月中旬に球形メセン以外の多肉は露地に作った棚上に搬出する。風と太陽に晒し現地に近い環境に努めるが、梅雨期と秋の長雨と台風襲来の場合、温室内に避難させる。南アフリカの気候は主に二型あり、西部は地中海性気候で冬季に雨が降り、夏は乾燥する。一方、東部と北部は亜熱帯高原気候で、冬季は乾燥し夏は雨が多い。南半球に位置するため季節は北半球と逆で、夏(11月~2月)は暖かく雨が多く、冬(6月~8月)は乾燥し、特に内陸部は夜間の気温が低下する。Eu. flanaganii等の蛸タイプは比較的雨が降る地方の原産なので、日本の春から秋まで水に反応して生育し、細長い枝を出し主幹も細く伸びあがる。これを避けるには潅水は天水にまかせ干天が続くときのみ行う。画像を見てもわかる通り年代物の幹をごらんあれ。30年以上栽培した結果である。

※4に続きます

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります

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