香象承伝19「Euphorbia」02

◆「タコもの」について
このグループのものを総称するに古くより「タコ」と表現していますが、やはり海の蛸を連想したのでしょう。正にそのものです。ところで、植物の学名についてはギリシア神話に登場する多数の神々に由来するものが多くありますが、その中にEuphorbiaタコ物の代表種 Eu.caputo-medusae カプト・メドゥサエや、Eu.gorgonis ゴルゴニスが存在します。これらについて神話の中で最も有名な部分を要約して記します。

◆メデューサの頭《ギリシア神話》より/ペルセウスの項
アルゴスの王アクリシオスには一人娘のダナエしかなく、息子がほしいと神に願った。神は答えた。「息子はできないが一人の娘が生まれ、その娘の息子が将来お前の災いの元となるだろう」。恐れた王はすぐさま、絶世の美女と知られたダナエに忍び寄る男を遮断し子の誕生を阻止するため、宮殿の中庭に青銅の館を建てダナエをその地下室に閉じ込めた。にも拘わらずその美貌に欲情をそそられた神々の王ゼウスが黄金の雨に身を変え屋根より伝わり、横たわるダナエの衣服に滴り落ち二人は結ばれた。ダナエは身ごもり、やがて生まれたのがゼウスの子ペルセウスである。驚き嘆いたアクリシオスは二人を方舟(はこぶね)に入れ海に流すが、流れ着いたセリーボース島で助け上げられ、ペルセウスは漁師の元で立派に成人した。
ある時島の王ポリデステークが身内で婚姻の宴を催す事となり、「参加者は皆一頭の馬を寄進するように」と群衆の前で発表した。漁師であるペルセウスは馬などあろうはずがなかったが、多数の人達の蔑視につい、「頭髪は蛇、顔は女、体は馬でその顔を見たものはすべて石と化してしまう恐ろしい牝馬ゴルゴーンのメデゥサ」その首をお持ちしますと胸を張って王に宣言してしまう。
ペルセウスは約束の遂行のために九つの国を越えてゆき、旅の目的を知った三人の泉の妖精(ニンフ)から三つの道具を借りることができた。第一は足音を立てずに空を飛べる「翼のついたサンダル」、第二は姿を隠せる「帽子」、第三は最も重要なゴルゴーンのメデゥサの頭を入れる袋「キビシス」を。
やがてたどり着いたゴルゴーンの住むヘスベリデス庭園で、入り口に立つ二人の灰色の髪の女神グライアイをこの道具を使って陥れ、ゴルゴーンの元へ通ずる道を聞きだし洞窟にたどり着く。洞窟の中には三人の怪物ゴルゴーンが睡っていた。そのうちの一人がメデゥサである。頭髪はすべてが蛇で、見たものはみな石と化してしまう恐ろしい怪物である。ペルセウスは足音を立てず忍び寄り、女神アテーナーよりさずかった楯にメデゥサを映してこの頭を切り落とし、すかさず「キビシス」に入れた。このときメデゥサの体から天馬「ペガサス」が現れ、ペルセウスはこれに飛び乗り追いかける二人のゴルゴーンをみるまに引き離し天空を駆け去った。

目的達成の帰路、パレスチナの海岸に美しい乙女が輝くばかりの裸身を岩につながれているのを見つけた。これぞアンドロメダであった。彼女の父ケーペウスはエティオピアの王であり、母は誇り高き美女カシオペイアである。アンドロメダは海神ポセイドンの娘ネーレーイスよりも母のカシオペイアの方が美しいと誇ったことで海神の怒りを買い、王国は差し向けられた怪物によって荒らされていた。怪物をなだめるため「アムモーンの神託によって」娘を怪物の人身御供にすることを強いられ王は、仕方なくアンドロメダを鎖で海岸の岩につないでいたのだ。わけを知ったペルセウスは「妻にくれるなら怪物を退治してやろう」と約束し見事退治する。約束通りアンドロメダを連れゆかんとするペルセウスの前にアンドロメダの婚約者である叔父のピーネウスが立ち塞がったが、「メデゥサの首」を掲げ従者もろとも石にしてしまった。


ギリシャ神話に伝わるこの英雄譚の、頭髮が蛇の「メドゥサの頭」そのままの学名が caputo-medusae カプトメドゥサエであり、三人の怪物ゴルゴーンが gorgonis ゴルゴニスなのです。海の蛸同様、その形から想像したのでしょうか。こちらも確かにそのものです。
※なお今回の現地でのすばらしい写真は、10数年前に日本多肉新年大会で拝領したデータを使用させていただきましたが、撮影された方のお名前を失念いたしました。お心当たりの方いらっしゃいましたらご一報くださいますようお願いいたします。
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タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります
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