香象承伝19「Euphorbia」01

トウダイグサ属Euphorbiaはトウダイグサ科に属する一群の植物です。学名は英語風読みのユーフォルビアで呼ばれることが多いですが、Ceropegiaをケロペギア、Aeoniumをアエオニウムと読むように、ここはあえてラテン語風読みのエウフォルビアとします。世界中の様々な環境に適応進化し形態的に非常に多様で、特に砂漠に生育するグループのEuphorbia horridaEuphorbia validaEuphorbia obesaなどのような、葉が退化し茎が多肉となってサボテンに酷似するものは我ら多肉植物愛好家に大変好まれています。
そんなEuphorbia属中には古くから「タコもの」と称される系統があります。今回はJSS会報誌「サキュレント」掲載の『2006/2/10 [甲信支部例会より] Euphorbia』改訂版を記述します。


今回取り上げるエウフォルビア属はトウダイグサ科に所属し2000種を越す種を保有しています。この中に一年草や多年草も混在しているのですから、きっと他の多肉植物の例にあるように新属をたてて移動するものがあるでしょう。私達のめざす多肉植物エウフォルビアはこの中にあって数百種の大きなグループです。ベンケイソウ科、ハマミズナ科とこのトウダイグサ科エウフォルビア属は多肉植物の中心的存在です。ベンケイソウ科は色彩的、造形的にすばらしいものが多数含まれています。またハマミズナ科は女仙の文字が表すごとく、小さく愛らしいもの、光沢のある美しい花をもつもの等が多数あります。そしてトウダイグサ科多肉エウフォルビア属は、形態的にサボテン科に非常に似ている植物があることは良く知られています。すべての生物を作られた神様はサボテン科を作った時、姿・形を失念し、重複してエウフォルビア属の植物にもそのアイデアを使われたのでしょう。(まさか!)

Euphorbia ingens(沖天閣)E.officinarumE.abissinica(巒岳ランガク)等はサボテン科のCarnegiea gigantea(弁慶柱)に似ています。E.obesaはサボテン科のAstorophytum属の兜にそっくりだし、究極はE.opunthyoidesE.gymunocaricyoides に至っては見た目ではエウフォルビアとは判断は難しく、植物に傷を付け乳白色の液を出すことで判明するほどで、二つの学名は「それに似た」の意です。広大な熱帯地方の庭園に植えられた樹木状巨大種から、手の平に乗るような小型種まで非常に変化があって、国内の観光温室ではこれらの多肉エウフォルビア属を幾つか見ることが出来ます。姿、形、大小など、あらゆるものが揃ってこれほどバラエティに富んだ植物はそうはないでしょう。
そんなサボテン科に勝るとも劣らないエウフォルビア属にも、ただひとつ負けるものが有ります。サボテンの美しく咲く花には特別な美しさがあって、さらに美花種がたくさんあります。多肉エウフォルビアは花はすべて貧弱で、鑑賞に値するものはハナキリンの仲間があるくらいです。

この多肉エウフォルビア属の中に、特異な形のグループがあります。それは“タコ”ものと言われる仲間たちです。主幹よりあたかも蛸を逆さにしたような枝を伸ばす奇怪でユーモラスなスタイルをしています。このタコという言葉の語源は一体どこから来たのでしょうか。姿が海の生物、蛸に似ているからでしょうか。今回のテーマ「タコ物」と言われる種類は、多数あるこの属の中の一グループの総称なのです。以下に分類を記します。

1.広葉類
多肉でない葉で、丸い棒状。一般植物的であるが地下に塊根をもつ。E.decarianaは、マダガスカル中部に産する珍種。

2.緑枝類
緑色で丸い棒状や偏平な枝を多数生じて群生する。E.tirucalii 青珊瑚(アオサンゴ)はよく知られたもので観葉植物として扱われる。

3.花刺類
多肉植物愛好家にとって重要なグループで怪奇な姿のものが多く魅力満点。突出した花を付ける枝が、花後も落ちずに木質化して残るものが多数ある。

3-A.トレイシア類
薄い葉で茎は円筒状、長卵形、若しくは地中に塊根状になる。通常、雌雄同花。E.monteroi 柳葉キリン、E.clandestina 逆鱗竜(ゲキリンリュウ)、E.tuberosa羊玉(ヨウギョク)などがある。

3-B.メドゥサ類

主幹は楕円形、あるいは太く短い棒状で下部は地下、ないし半地下で塊根状。主幹より種類によって長く、短く、太く、細く放射状に多数の枝を出す。E.caputo-medusae天荒竜 (テンコウリュウ)、E.inermis九頭竜 (クズリュウ)などがあり、通称「タコ物」と称してエウフォルビアの中でも特に奇異な形なので好まれる。

3-C.花棘類
小さく、地表に潜り込んだような植物体。小さなグループでE.orunitopus鳥足キリン、E.grobosa玉鱗宝(タマリンポウ)など数種。

3-D.真花刺類
苛酷な環境に適応したグループで、多くは短い枝が主幹より多数群生し球状ないしマット状。稜を立ててサボテンに近似の形状になる。雌雄異株が多数。E.horida魁偉玉(カイイギョク)は、和名より学名のホリダで広く知られている。E.obesaオベサも同様に学名そのままで普及している。他にもE.susannae 瑠璃晃(ルリコウ)、E.merohormis貴青玉(キセイギョク)など多数知られている。

(分類以下略、その2に続きます)

この記事を書いた人

七宝樹
タイトルは「こうぞうしょうでん」と読みます
長野在住
多肉含めて植物全般「今昔」いろいろを語ります